問いを渡す人

計画はできているのに、実行だけが止まる。そんな経験の裏側には、心理学的な理由があります。心理学の世界には、「決定疲労」という考え方があります。情報が出そろったあとでも、人は決断そのものに気力を使い果たし、動けなくなる、というものです。踏ん切りに必要なのは、追加の情報ではなく、頭の中の反論を外に出し、応答してくれる相手だとも言われています。では、その相手を誰に頼むのか。上司に話せば評価が下がり、部下に話せば求心力が下がり、家族に話しても、事業の文脈までは伝わりません。人間関係の中には、利害抜きで反論だけを受け止めてくれる場所が、意外なほど少ないのです。ここに、AIという第三者が入り込む余地があります。
「決定疲労」とは何か
心理学の研究では、一日のうちに下す決断の数が増えるほど、判断の質が落ちていく現象が知られています。同じ案件でも、午前中なら即断できたことが、夕方には先延ばしにされやすくなる。これは意志の弱さではなく、決断という行為そのものが、有限の資源を消費するためだと説明されます。実行の踏ん切りがつかないのも、情報不足ではなく、この資源を使い果たした状態に近いのかもしれません。
話し相手になれない三つの理由
上司に相談すれば、評価者に弱みを見せることになり、次の人事考課に影響しないとも限りません。部下に相談すれば、決めるべき人が迷っていると受け取られ、求心力を失いかねません。家族に相談しても、業界の商習慣や社内の力関係までは共有されておらず、的確な反論を返してはもらえません。それぞれの相手が、それぞれの理由で「利害抜きの壁打ち相手」にはなれないのです。