計画は描けても、実行に移せない――そう感じている管理職は、決して少なくありません。私自身も、そうでした。識学的なマネジメント理論を学び、権限移譲の設計図は何度も描き直しました。誰が何を決め、誰が何を担うか。紙の上では、非の打ちどころがありません。しかし実際に部下へ渡す段になると、指が止まりました。「これで本当に現場は崩れないか」「社長はこの変更を許すか」。頭の中で反論が次々に浮かび、結局、修正という名の先延ばしを重ねました。誰かに話せば楽になると分かっていても、上司には弱みに見え、部下には不安に見えます。設計は一人でもできます。けれど実行の踏ん切りは、一人の頭の中だけでは、なかなかつきません。
紙の上では完璧だった権限移譲
具体的に描いたのは、こんな設計図でした。現場の判断は主任に委ね、金額の大きい発注だけを自分が承認する。クレーム対応の初動は現場に任せ、再発防止策の決定だけを持ち帰ってもらう。線引きは明確で、資料としては誰に見せても恥ずかしくない出来でした。
頭の中で止まらなかった自問自答
それでも、実際に部下へ渡す紙を前にすると、指が止まりました。「主任が判断を誤ったとき、責任は誰が取るのか」「社長に相談もなく線引きを変えて、越権と思われないか」。同じ資料を三度、四度と直しては、これは慎重さだと自分に言い聞かせていました。しかし実際には、直すたびに新しい不安が生まれるだけで、内容はほとんど変わっていなかったのです。